ビジネスの場において、名刺を交換するということは、自分の名前を知ってもらうとともに、相手を知るという意味を持ちます。
必ず行われる儀式的なものと考える人もいますが、これは異なるということを知らなければいけないでしょう。
その行動ひとつを見られているということが重要です。行動の中には、マナー的な部分もありますし、挙動を見るだけで、こうした場に対して慣れているかどうかもわかります。
本当に仕事を任せてもいいのか、依頼してもらうことができるのか、たった短い行動の中にさまざまな情報が入ってくるからこそ、行動を見て判断しているでしょう。ただ単に受け渡しというだけであれば、何もマナーなどいりません。
それこそ、IT系の会社の中の一部で行われているように、名刺自体を廃止してSNSなどで調べればいいということになってきます。それ以上の意味合いがあり、一瞬でわかる情報が隠れているからこそ、大事な瞬間となるといえるでしょう。
多くの情報が隠れている瞬間でもありますが、名刺入れとの関係を知っておくと、どうやって入れておけばいいのか、向きなども出てくるようになります。
ただし、絶対にそうするべきことではなく、便利な方法と考えることが必要です。なぜならば、行動が情報となって伝わるのであり、入れ方自体が情報となって伝わるわけではないからです。
木を見て森を見ずでは、まったく意味がないということを忘れないようにすると、向きのひとつでも違いを生み出していくことができるようになるでしょう。
名刺入れの役割は、座布団やお盆と考えるとわかりやすくなります。
お茶をお出しするとして考えると、そのまま出すのではなく、茶碗に触れなくてもいいようにお盆で出すことになるでしょう。お客様が見えた時、畳であれば座布団を出すのは当然のことです。
名刺をいただく際にも、直接頂くのではなく、ワンクッション置くことができるように名刺入れの上で受け取れば、丁寧に扱うことができるでしょう。それぐらい大きな意味を持ってきます。
ただの入れ物ではないということを理解すると、安っぽいアルミ製やプラスチック製の物は適さないということが見えてくるでしょう。派手すぎるようなものも、場の雰囲気に合わない可能性が出てきます。
ブランド物もNGとされるのは、派手であるからというだけではありません。だいたいの場合、ロゴが前面に出るように作られていますので、主役が入れ物になってしまうことになるでしょう。興味がなくても目線がいってしまいますので、主役が変わってしまうことになります。
これでは失礼な話になってしまいますので、暗黙の了解として使わないということになるのは、当然のことといえます。
大事な存在であるのですから、大切に扱っていかなければいけません。胸ポケットにしまっておくのが一番ですが、もしも、尻のポケットから出てきたらどうでしょうか。なんだか清潔に見えませんし、そこにまたしまうのかと思えば不快になるのは当然です。
頂いた名刺は、打ち合わせの間は名刺入れの上においておくことになるのですから、どれだけ失礼なことになるのかを理解しておかなければいけません。
自分なら嫌なことはしないというのは、常識の範疇であることを理解するべきです。
入れ方を考えるというのは、交換するということから出てきた発想でもあります。向きを考えることによって、スムーズに進めていくことができるからです。
一般的には、名刺は読めるように入れるでしょう。
頂いた名刺が逆さまになるように入れることは、礼を失するというレベルにまではいかないものの、なぜだろうと感じさせることになります。ですが、自分の名刺の向きを逆にするというのは、ひとつの発想です。
自分の名刺を渡すときには、相手にそのまま読んでもらえる向きにして渡すことになります。単純に言えばひっくり返すということですので、初めから逆にしておくとスムーズになるということです。取り出すタイミングで無理なく行うことができるようになる方法のひとつであることは確かでしょう。
さっと取り出すことができるようになれば、かなり有効な方法になるのは間違いありません。ですが、慣れていないと、逆さとなってしまうことも出てきます。
自分の名刺の下の部分をつかむことになるため、取り出した時には自分のほうに向いた状態でもあることを忘れてはいけません。そのまま出そうと思うと実は逆さまになりかねないということも覚えておくといいでしょう。
大事なことは、スムーズに受け渡しができるようにすることです。
渡すということだけを見ているのではなく、交換ということのすべてを対象にしていることを忘れてはいけません。これが、木を見て森を見ずという意味です。
どこにあったかなと思ったりしないように、入れる場所をはっきりとさせておき、スムーズに取り計らうということが一番でしょう。
入れ方などを慣れていない方法にすると、逆に失敗したりしますので、あくまでも新入社員や営業職になりたての時に有効な方法と考えておくと間違いはありません。